
#038書を片手に、町へ出よう。
ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイス

国木田独歩が「生活と自然とがこのやうに密接している」と評したかつての武蔵野。その面影を色濃く残す武蔵野市は、武者小路実篤や金子光晴など、数々の文人たちが愛し、暮らした街として知られます。そんな文学の香り高い土地柄のせいでしょうか、人口10~15万の自治体において、市立図書館の貸出冊数が全国一多いのだそう。また、市内にある3つの駅(吉祥寺、三鷹、武蔵境)それぞれを最寄りとする立地に図書館が配置され、市民が気軽に図書館に足を運べるようになっているのも特徴的です。

中でも、武蔵境駅前にある「ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイス」は単なる図書館の枠を超えた、とてもユニークな存在として知られます。駅前に降り立ってすぐに目に留まるのが、丸みを帯びた独特な外観。地上4階・地下3階建ての建物の中には、メインとなる図書館のほか、スタディコーナー、ラウンジ形式のフリースペース、運動やダンス、演奏のための各種スタジオ、さらにはカフェなど、利用者のための多彩な“居場所”が用意されています。

「2010年の鉄道高架化を皮切りに、武蔵境駅前は再開発によって大きく変化してきました。その中で『駅前に図書館をつくってほしい』という市民の方々の声に応える形で誕生したのが、滞在型図書館『ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイス』です。図書の貸し出しだけでなく、学びや交流の場として開放したり、様々なイベントを開催したりすることで、市民の皆さんに新しい発見や出会いを提供し、地域活性化につながることを目指しています」と語ってくれた、館長の原島さん。

柔らかい曲線と木の温もりに囲まれた館内には明確な仕切りがなく、回遊性を高めているのが特徴なんだとか。各スペースがゆるやかにつながる中で、新たな刺激や発見を得やすいように、との思いが込められているのだそうです。

「ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイス」のもうひとつの大きな特徴は、1年を通してイベントがとても充実していること。絵本の読み聞かせなどの定番はもちろんのこと、映画上映、司書体験、こどもまつりなど、子どもから大人まで楽しめるイベントが多数開催されています。

「本にまつわるイベントだけでなく、市内の大学と連携した生涯学習支援や、主に10代の子どもたちに向けた青少年活動支援も行っています。社会人向けのセミナー、小中学生の体験教室、対話を楽しむ哲学カフェといった幅広いジャンルのイベントがありますので、きっと誰もが興味のあるテーマを見つけていただけると思います。もちろん、ただ本を読みに来るだけでもOKです。借りた本を読みながら1階のカフェや隣接する公園で一息ついたり、イベントの様子をなんとなく眺めたりと、一日中楽しんでいただけますよ」。

本を借りたついでに街を歩き、玉川上水など緑豊かな場所でページをめくるのもよさそうです。
文人たちの琴線に触れた風景の中で、じっくり本の世界に浸ってみてはいかがですか。

書を片手に、寄り道スポット

「ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイス」1F中央にある、本や雑誌に囲まれたオープンスペースのカフェ。館内の図書はもちろん持ち込みOKで、コーヒーや軽食をいただきながらゆったりと読書を楽しめます。公共施設内にあるカフェでありながら、お茶のみならずお酒も提供しており、ルーマニアワインやお店オリジナルの武蔵野ビールなどが人気だそう。カウンター席に電源コンセントがあったり、おもちゃや絵本が置いてあったりと、あらゆる世代に向けた気遣いも嬉しいポイントです。




多摩川の水を江戸市中に取り入れるため、羽村市から新宿区四谷まで約43kmにわたってつくられた上水路。武蔵境駅から北上し約10分ほど歩くと、樹々に囲まれ、今も水流が残る玉川上水の姿が見られます。水路沿いは桜並木になっていたり、遊歩道として整備されていたりと、散歩コースにぴったり。国木田独歩や太宰治などゆかりの文豪たちの文学碑も点在しているので、作品世界に想いを馳せながら歩いてみるのもいいかもしれません。




取材協力:ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイス
図書館、生涯学習支援、市民活動支援、青少年活動支援の4つの機能を備えた複合機能施設として、2011年に開館。こども向けなどテーマ別のライブラリーが充実しており、約600タイトルの雑誌最新号を配置したマガジンラウンジは特に人気だそう。市民以外に、三鷹市や杉並区など近隣市区にお住まいの方も資料を借りることができます。
ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイス
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