
#036うまみ引き出す、土の力。
長谷園 東京店 igamono

寒さが厳しくなるにつれて、食卓で使う頻度がぐっと高まる土鍋。実は定番の鍋料理以外にも、煮る・焼く・蒸すなど様々な調理法が可能な万能器具であることをご存じでしょうか。
土鍋の奥深い魅力を伺うために訪れたのは、天保三年に開窯した伊賀焼の窯元「長谷園」の東京店「igamono」。バリエーション豊かな土鍋を販売する同店で土鍋コーディネーターを務める竹村謙二さんは、土鍋の魅力の原点はその独特な土にあるといいます。

「鍋として火にかけられるほどの耐火性を持つ陶土は、国内では伊賀の土しかありません。伊賀の土は、四〇〇万年前の古琵琶湖が隆起した層から採れるのですが、かつて湖底にあった土なので太古の生物や植物の化石が多く含まれています。それを高温で焼き締めると、化石だけが燃えて穴だらけの焼き物ができます。空気をたくさん含んだダウンコートをイメージしていただくとわかりやすいと思いますが、温まるまで時間がかかり、一度温まれば冷めにくいという土鍋の特性は、この特別な土のおかげなんです」。

食材は40℃から60℃の間で最もうまみと甘みが増すといわれるそうですが、土鍋で調理する場合はこの温度帯をじっくり通過することがポイントなんだとか。
「食材がゆっくり温まるというだけで、勝手においしくなっちゃうんです。さらに土鍋の場合は、温まると遠赤外線を放出します。要はガスやIHなどの熱源を使いながら、炭火料理ができるようなもの。食材の芯から火を通す遠赤外線で360度から調理できるので、ますますうまみが引き出されるんですね」。

そんな特性を持つ土鍋は、竹村さん曰く「揚げ物以外の調理は何でもできますよ」とのこと。
「大量の油を入れて加熱すると鍋の穴に油が染み込んで燃えてしまうので、ほんの少し油をひいて食材を炒めたり、蓋をして揚げ焼きにしたり。肉じゃがのような煮物も当然おいしくできますし、トマト煮込みなど洋風のメニューもおすすめです。小ぶりな土鍋で作れば、そのまま食卓に出して熱々を召し上がっていただけます。皆さんが普段フライパンや他の鍋で作っていらっしゃる料理は、大抵土鍋でも作れるんです」。

食材と調味料を入れて火にかけるだけでおいしい料理ができあがる土鍋は、「料理があまり得意ではないという方や、忙しくて時短を目指す方にこそ使ってほしい」と竹村さん。
「土鍋は、少ない工程で簡単においしい料理ができる優れものです。食材一つひとつの味や特性が際立つので、お子さんの食育にもぴったりだと思います。寒い時期だけでなく、一年を通して様々な料理にぜひ活用してみてください」。

長谷園の「ヘルシー蒸し鍋」で2品同時調理!
付属する陶製すのこで手軽に蒸し料理が楽しめる「ヘルシー蒸し鍋」を使った、とっておきの簡単レシピを教えていただきました!

蒸し野菜と豚肉のトマト煮込み

- 用意するもの
- 長谷園の
「ヘルシー蒸し鍋」 - セロリ
- 豚肉
- オリーブオイル
- トマト
- 蒸し野菜用の
お好みの野菜 - タマネギ
- あればセージの葉などの
ハーブ

お好みの野菜を一口サイズに切って陶製すのこにのせておく。
豚肉、トマト、玉ねぎ、セロリ、にんじんを一口サイズに切り、
豚肉に塩をまぶす。にんにくをみじん切りにする。土鍋にオリーブオイルをたっぷり入れる。


2の材料を土鍋に入れ、あればセージなどのハーブも入れる。
蓋をして火にかける。


蒸気が出てきたら一度蓋を開け、1の陶製すのこをのせる。
再び蓋をしてそのまま5分ほど火にかけたらできあがり。


蒸し野菜はシンプルに、
塩や
お好みのドレッシングなどで
召し上がれ!

土鍋のお手入れ方法
焼き物である土鍋は、お手入れなどの取り扱いが難しそう…と思っていませんか?竹村さんによれば、「土鍋の特徴さえ知っていれば、シンプルで簡単ですよ」とのこと。「土鍋には細かい穴がたくさん開いているので、使い始めはお粥を炊き込んで穴を埋める『目止め』と呼ばれる作業が必要です。調理後は普通の鍋やフライパンと同様に食器用洗剤で洗って、よく乾かしていただければ大丈夫。土鍋を長持ちさせる基本は、しっかり乾燥させることです。濡れたまま火にかけたり、食材を入れっぱなしにしたり、水に浸けたままにすると、ひびやカビの原因となりますので注意してください。浅いひびであれば、再度お粥を炊いて塞いであげることで補修できます」。長谷園のホームページでは、目止めの方法や日常のお手入れ方法を詳しく案内してくれています。また、お手入れに関する相談窓口や「焼き直しメンテナンス」など、土鍋を末長く使うためのサービスも充実。判断に迷ったら、ぜひ相談してみてください。



取材協力:長谷園 東京店 igamono
三重県伊賀市に本店を構える長谷園のアンテナショップとして、土鍋をはじめ伊賀焼の器やオリジナルキッチン用品など、多彩な商品を揃えています。キッチンも併設されており、竹村さんによる料理教室やワークショップも定期的に開催されています。
長谷園だより 土鍋のある暮らし
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