
#033西荻窪、骨董日和。
ひぐらし古具店

細田工務店がある阿佐ヶ谷からわずか2駅、JR中央線沿線の街・西荻窪。「骨董通り」と呼ばれる道があるほど、古くから骨董店やアンティークショップが集まる街として知られています。その中でも、アンティーク好きのみならず、インテリアのDIYを楽しむ方やお店を営む方からも熱い支持を集めるお店が、“カフェな暮らし”をコンセプトにした「ひぐらし古具店」です。

こぢんまりとした店内には、ヨーロッパや日本で買い付けたアンティーク家具のほか、フックや取手、スイッチといったパーツ類、照明器具など、カフェのようなインテリアにぴったりな物が数多く並んでいます。

「西荻窪は、関東大震災で被災した文化人たちが多く移り住んだ場所。そのとき建てられた邸宅から、趣のある家具や調度品などが売りに出され、この街に骨董やアンティークを扱う店が増えていったそうです。アンティークの持つ雰囲気、存在感は、いくら頑張っても絶対に再現できないもの。時を経ていないと、醸し出せない魅力です。時代や使っていた人のストーリーが詰まった物を自分の家に置いておくのって、ロマンがありますよね」。
そう語るのは、店主の稲村陽子さん。

稲村さんはインテリアデザイナーでもありながら、アンティーク好きが高じて同僚と共にこのお店を始めたのだそう。オープンから11年、稲村さんは今、日本の古道具に改めて魅力を感じているといいます。

「大正時代や昭和初期につくられた家具や調度品って、現代の洋風のインテリアにも意外と合わせやすく、とてもモダンに見えるんです。シンプルなデザインや日本の住宅に合った小ぶりなサイズ感も、取り入れやすいポイントだと思います。そんな中でも、ただ機能的というよりはどこか遊びがあって、部屋に置くだけでちょっと気分がウキウキするようなものをセレクトしています。最近は、古い物に手を加えて再生させることにも挑戦しています」。
そう言って紹介してくれたのが、昭和初期から普及しはじめたといわれる真空管ラジオ。「ひぐらし古具店」では、戦前戦後につくられた真空管ラジオを補修し、中身をBluetooth対応のスピーカーに入れ替えて、新たに音楽を楽しめる形にして販売しています。

「ほんの少しつくられた時代が違うだけで、デザインがガラリと変わるところも面白くて。木で囲まれているからか、音もまろやかで綺麗に聴こえます。アンティークは物としての存在感も素敵なんですが、こういう音だったり、電球の光だったり、五感で感じられる部分にこだわるのも楽しいんじゃないかなと思っています」。

「ひぐらし古具店」のような日本のアンティークに出会える店に加え、こだわりの雑貨店、カフェがひしめく西荻窪は、「海外からの旅行者含め、街歩きに訪れる方が近年ますます増えている印象です」と稲村さん。
「『西荻茶散歩』や『神明通りあさ市』のように長く続いているイベントも多く、とにかく歩くのが楽しい街。個性豊かなお店やおいしいお店、一点もののアンティーク品など、素敵な出会いがたくさんあると思いますので、ぜひ散策にいらしてください」。
とっておきの出会いを求めて、豊かな文化が息づく西荻窪をのんびり歩いてみませんか。

西荻窪おすすめイベント① 西荻茶散歩

2009年にスタートし、秋風が心地よい11月第3土曜・日曜の2日間に開催されている街歩きイベント「チャサンポー」。西荻窪に点在する参加店舗では無料のお茶がふるまわれ(飲食店は除く)、参加者はお茶をいただきながら個性豊かなお店巡りができます。チャサンポーの2日間は、お茶に加えて各お店で展示会やワークショップなども催されるので楽しみが広がります。2024年は雑貨店、ギャラリー、飲食店など56店舗が参加予定。「ひぐらし古具店」も毎年参加しており、西荻窪の魅力を存分に満喫できるイベントになりそうです。
西荻窪おすすめイベント② 神明通りあさ市

毎月第3日曜日に、商店街を車両通行止めにして行われるあさ市。なんと1975年から続く歴史あるイベントです。生鮮品やお茶、コーヒー、お菓子、雑貨などの販売のほか、屋台やフリーマーケットなどもあり、毎月多くの人で賑わいます。会場となる神明通りには児童公園やカフェなど休憩スポットもあるので、お子さん連れでものんびり楽しめるでしょう。


取材協力:ひぐらし古具店
カフェスタイルの家具・雑貨をコンセプトに、2013年にオープン。国内外のアンティーク品のほか、木製品のメンテナンスに欠かせないオリジナル蜜蝋ワックス、昔ながらの白熱電球の光を再現した調光可能なLED電球など、現代の暮らしにフィットした商品も取り揃えています。新入荷の商品はオンラインショップでいち早くチェック可能です。
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