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#042共に暮らす、を楽しむ住まい。

一級建築士・家庭動物住環境研究家 金巻 とも子さん

キャットタワーに座る三毛猫

猫を飼っている方なら、彼らにとってどんな住まいが心地よいのだろう?と一度は考えたことがあるでしょう。大切な家族だからこそ、猫も人間も、それぞれが快適に過ごせる空間をつくりたい。そんな願いを叶えるヒントを探るため今回訪ねたのは、一級建築士・金巻とも子さんのご自宅です。

本棚の前で猫と一緒に立つ一級建築士・金巻とも子さん

金巻さんは、猫や犬などペットのための快適な住まい設計と研究を続けているスペシャリスト。金巻さんがペットが喜ぶ住まいに興味を持ち始めたのは、様々なトラブルの相談が寄せられたことがきっかけだったのだそう。

部屋の高所に設置されたキャットウォークと、かごの中でくつろぐ猫

「当時はマンションの企画設計を担当していたのですが、ペットのことで悩んでいる方がとても多かったんです。どうすれば人間と動物が心地よく共同生活を営めるのだろう?と疑問に思ったのがすべての始まりでした。ペットのいるご家庭を調査したり、動物のトレーナーさんに話を聞いたり、様々な研究を重ねてわかったのは、快適な暮らしには人間と動物の関係性が何より大切だということ。そして関係性を深めるためには、住まいの空間づくりが大きな手助けになるということでした」。

キャットタワーで遊ぶ二匹の猫と、クッションの上でくつろぐ猫

金巻さんご自身も2匹の猫を飼われており、リビングにはキャットタワーやキャットウォークが設置されています。一見ごく普通の空間ですが、そこにはどんなポイントがあるのでしょうか?

本棚とキャットタワーが設置された明るいリビングルーム

「猫は、自分のいる空間について、安全な場所から自分のペースで観察して評価する動物です。キャットウォークなどの高い場所を好むのは、空間をじっくり観察するため。お部屋全体をしっかり観察できる場所をつくってあげるのが基本です。さらに猫にとって最も飽きない観察対象は、実は私たち人間なんです。彼らは、私たちの日常の動きを見るのが大好き。人間が出入りするドアの近くなど、動きがよく見えて、なおかつ人間の目線よりちょっと上の位置に居場所をつくってあげると、喜んで活用してくれるはずです。こうした基本をふまえた上で、楽しい遊び場や安全な隠れ家が何箇所かあれば、猫にとってとても居心地のいい住まいになりますよ」。

日差しの差し込む窓際のラグに座る三毛猫

そうして猫が落ち着ける空間ができあがった時、暮らしそのものにも嬉しい変化が訪れるといいます。
「きっと猫との距離が縮まったのを感じられると思います。ふと顔を上げるとすぐ側で目が合ったり、猫と暮らす楽しさや喜びをたくさん実感できるのではないでしょうか。猫だって、本当は人間との暮らしをもっと楽しみたいと思ってくれているのですから」。
快適な住まいづくりは、彼らのそんな気持ちを引き出してあげるところから始まるのかもしれません。

白いソファのあるリビングで、膝に猫を抱く一級建築士・金巻とも子さん
撮影:大崎晶子

猫のためにできる備え

ペットとの心地よい暮らしを考える中で、近年は「ペット防災」の意識が高まっているといいます。特に猫の場合、犬のように散歩やレジャーなどで家の外に出る機会が圧倒的に少なく、万が一避難が必要になった時に様々な困難が生じやすいといわれます。非常時にも猫が安心して過ごせるよう、人間が日頃から備えておくことが大切です。

キャリーバッグに
慣れさせておく

キャリーケースを覗き込む猫のイラスト

いざという時にスムーズに避難できるよう、普段からキャリーバッグを隠れ家や寝る場所のひとつとして使うのがおすすめ。猫にとって安心できる場所になっていれば、災害時にも自ら入ってくれるので迅速に安全な場所へ移動できるでしょう。逆に通院の時だけ使っていると、キャリーバッグ=怖いと認識してなかなか入ってくれず避難が遅れてしまう危険があります。キャリーバッグの配置場所は、いつも生活している部屋の静かで奥まった場所が最適。床に近い高さに配置する方が、緊急時でも安心して使えます。

3段ケージを使用する

ケージの中に座る猫のイラスト

近年推奨されている在宅避難の際に役立つのが、ベッド・トイレ・遊び場などあらゆる要素をコンパクトな空間に盛り込んだ、猫用の3段ケージ。子猫時代に使ったという方も多いと思いますが、成猫になってもぜひそのまま使い続けてください。ガラスが割れたり、人間が一時的に避難所に行くなど猫にとって様々な危険が生じる非常時にも、ケージがあればひとまず安全に過ごしてもらうことができます。「隠れ家」感を強化するために、2つの側面が壁に接するよう部屋の隅に配置したり、ケージをブランケットで覆うのもおすすめ。普段は扉を全開にしてその前にキャットタワーを配置すれば、猫はタワーからケージに出入りでき、3段の空間を有効に活用してくれるでしょう。

ペットと暮らす住空間にまつわるイベント
ペットインテリア展 Pet Salone

金巻さんがアドバイザーを務める「ペットインテリア協会」では、「ペットと共に心地いい」をテーマに、住空間やペット専用家具の提案などを行っています。同協会が年に一度開催しているイベントが、「ペットインテリア展 Pet Salone」。企業向けの展示会ではありますが、一般の方もペットを連れての来場が可能です。住空間と調和するデザインのペット関連商品を厳選して紹介しているほか、専門家によるセミナーも開催しており、今年は「ペットに安全な床」とペット防災に通じる「ペットツーリズム」が2大テーマ。また金巻さんも、建築家としてペットと心地よく暮らすための住まいづくり相談会を行うそうです。第8回を迎える今年は11月に開催予定。愛猫とのより心地いい暮らしのヒントを見つけに、ぜひ足を運んでみてください。

ペットインテリア展の会場風景。家具やペットグッズを展示するブースと来場者

第8回ペットインテリア展
Pet Salone(ペットサローネ)
会期:2025年11月19日(水)~21日(金)各日10:00~17:00
会場:東京ビッグサイト 南3・4ホール(第10回アジア・ファニシング・フェア2025内)

第8回ペットインテリア展 Pet Salone

取材協力:一級建築士・家庭動物住環境研究家 金巻 とも子さん

取材協力:
一級建築士・家庭動物住環境研究家 金巻 とも子さん

大手建築会社での設計部勤務を経て、1998年に独立しかねまき・こくぼ空間工房を設立。動物の医療や行動学など幅広い観点からペットとの暮らしを研究しており、ペットがいるお宅の住宅設計はもちろん、すぐに実践できる空間づくりのアドバイスなども行っています。里親募集サイトから迎えたというまめちゃん、研究活動を通じて出会ったふくちゃんのために、リビングの本棚やソファはすべてキャットウォークの一部として設計しているそうです。

設計事務所「かねまき・こくぼ空間工房」

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