#024豊かさを、循環させる暮らし。
エシカルプランナー 中川原 圭子さん
ここ数年で「エシカル」「サステナブル」などの言葉が世の中に浸透し、頻繁に耳にするようになりました。持続可能な社会の実現に向けて、誰もが向き合うべきテーマではありますが、具体的に何をしたらいいのかわからない、何もしていない自分になんとなく後ろめたさを感じてしまう、という方も多いのではないでしょうか。今回そんなモヤモヤを解消するためのヒントを教えてくださったのは、「エシカルプランナー」という肩書きで活動する中川原圭子さん。暮らしの中で誰もが楽しみながらできる「エシカル」なことについて、幅広く発信していらっしゃいます。
「『エシカル』という言葉は直訳すると『倫理的』という意味で、簡単にいうと、自分にとっても、環境や社会にとっても心地よい選択をしよう、という考え方のことをいいます。日本語には『三方よし』『お互い様』という相手を思いやる言葉がありますが、まさにそのイメージがぴったり。ですから『エシカル』を義務として負担に感じたり、取り組めていないと罪悪感を抱く必要はないんです。日常で誰もが取り組める『エシカル』なことって実はたくさんあるんですよ」。
そう語る中川原さんがまずおすすめしてくれたのは、家庭から出る生ごみに着目すること。「キッチンから世界は変えられるんです」と中川原さん。
「家庭の生ごみを減らすことは、単純なようでいて環境に大きな影響を与えます。とは言っても全員が同じ方法で取り組むのは難しいので、ぜひご自分のライフスタイルに合った方法を探ってみてください。例えば、家族が食べる量に見合った食材の買い方や、食材の可食部を余すことなくいただける食べ方について考えてみるだけでも、生ごみの量は大きく変わるはずです」。
さらにもう一歩取り組んでみたい方におすすめなのが、生ごみを“活かす”ことができる「コンポスト」という選択肢。コンポストとは「堆肥」「堆肥化する」という意味で、家庭から出る生ごみを微生物の働きによって発酵・分解して堆肥をつくる仕組みのこと。近年では庭に設置するタイプや埋め込み式、より手軽なバッグタイプなど、多様な種類のコンポストが開発・販売されています。
「私も愛用しているバッグ型のコンポストは、生ごみを入れて、混ぜて、蓋をするだけなので初心者にもおすすめです。でき上がった堆肥はガーデニングに使ったり、畑のある実家に送って野菜づくりに活用してもらっています。あっという間に生ごみが分解されて堆肥になり、再びその堆肥で育った野菜を食べる時、食の循環と『いただきます』という言葉の重みを実感します」。
日本の食品ロスは年間約522万トン(※)、毎日一人あたりお茶碗一杯分の食品を捨てていることになるといわれます。一方バッグ型コンポストは、一日にお茶碗2.5杯分ほどの生ごみを入れることができるのだそう。
「ごみとして捨てていたはずの倍以上を土に還してあげられるのは、非常にインパクトのあるアクションですよね。コンポストは都市に暮らす私たちと土との距離をぐっと近づけてくれますし、自分も大きな循環の輪の一部になれることが、暮らしに豊かな充実感を与えてくれます。お庭やバルコニーで、ぜひ挑戦してみてください」。
※農林水産省、環境省令和2年度推計値
コンポストの気になる疑問 Q&A
コンポストは基本的に一定期間生ごみを投入した後、堆肥になるまで熟成させる期間が必要です。コンポストの種類や環境、気温などによって異なりますが、バッグ型の場合は約2ヶ月間生ごみを投入した後、3週間熟成させます。熟成期間は発酵・分解が進むため、熱が発生しバッグから蒸気が出るほどホカホカになることも。
庭に土がある環境であれば、地中に蓋付きのコンポストを埋めて使う埋め込み式が最も手軽です。落ち葉や雑草なども入れることができます。土がない場合は、木箱やプランターなどに黒土を入れて生ごみを混ぜ込む「キエーロ」という装置がおすすめ。自治体が助成金を出している場合もあるのでチェックしてみてください。
とにかく生ごみを腐敗させないのが最大のポイント。それぞれのコンポストに合った生ごみの量、内容、入れるタイミングなどを守り、うまく分解が進めばにおいや虫のリスクも少なく済みます。肉や魚を入れすぎるとにおいが出やすいようです。バッグ型なら密閉構造になっているのでにおいの心配はほとんどありません。
家庭菜園やガーデニングを楽しんでいる方はもちろんそのまま堆肥を活用できますが、毎回でき上がる堆肥を使い切れない場合も。そんな時は、自治体やコンポストメーカーが無料で回収してくれる場合があります。堆肥回収会などのイベントを通じてコンポスト仲間ができたり、つながりが広がるのも楽しいですよ。
取材協力:エシカルプランナー 中川原 圭子さん
出産をきっかけに、自分の選択が子どもたちの心身・未来を形作るきっかけになれるという気づきから、まずオーガニックに興味を持つように。2016年に初めて「エシカル」という言葉に出会い、より相互的に支え合う考え方に共感し「エシカルコンシェルジュ講座」を受講。2018年よりフリーのエシカルプランナーとしてメディアの立ち上げや企業、店舗のマネジメントに関わるなど、幅広く活躍されています。
Instagram:@keiko_nakagawara