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#005鳥たちは、我が家の庭で。

公益財団法人 日本野鳥の会 (萩原 洋平さん)

ソメイヨシノの蜜をなめるヒヨドリ

ガーデニングの本場イギリスでは、ただ美しい草花を植えるだけでなく、鳥たちが集まりやすい環境をつくるところまでが庭のデザインの一部として考えられているのだそうです。日本野鳥の会の萩原洋平さんによれば、工夫次第で日本の住宅の庭でも気軽にバードウォッチングが楽しめるといいます。

公益財団法人 日本野鳥の会 萩原 洋平さん
ズミの実を食べるウソ
ズミの実を食べるウソ

「鳥たちを庭に呼び寄せるには、マンリョウやムラサキシキブなど鳥の食料となる実のなる木を植えてみるのがおすすめです。さらにその近くに落葉樹を植えると、秋に紅葉を楽しめるだけでなく、冬に葉が落ちれば庭にやってきた鳥を観察しやすくなるというメリットもあります。一方で隠れるところが全くないと鳥たちも警戒してしまいますので、庭の端の方にサツキやヒュウガミズキなどの低木も植えておけば、安心して来てくれるでしょう。そして鳥たちにとって食事と同じくらい欠かせないのが水浴び。木の下に、浅めの鉢などを使って水場を用意してあげてください」。

水浴びするスズメ
水浴びするスズメ

鳥たちが居心地よい環境をつくるポイントは、「鳥の動線をじっくり観察すること」と萩原さん。
「毎日観察していると、庭のどちらの方角からやってくるのか、鳥たちの“通路”が見えてくるはずです。その通路をふさがないようにして、枝から枝へ移りやすいように木を程よい距離感で配置したり、低木も植えてみるなど、鳥たちの動きに合わせた庭づくりのコツがだんだんわかってくると思います」。

巣だってひと月半ほどの若いシジュウカラ
巣だってひと月半ほどの若いシジュウカラ

現在の首都圏の住宅地では、シジュウカラ、ヒヨドリ、メジロなど、およそ 10 種類ほどの鳥を見つけられるといいます。近年では、キツツキの一種であるコゲラや、白黒で長い尾を持つハクセキレイなども見られるようになってきたのだそう。バードウォッチングをより楽しむためには、鳥たちの習性を知っておくのも大切です。

ヤマグワの中で周りをうかがうウグイス
ヤマグワの中で周りをうかがうウグイス
エゴノキの実を食べるヤマガラ
エゴノキの実を食べるヤマガラ

「多くの鳥は春に繁殖期を迎えます。有名な“ホーホケキョ”をはじめ、鳥たちの美しいさえずりが聞けるのは繁殖期である春だけなんです。それ以外の時期は、『地鳴き』といって短くシンプルな鳴き声になります。巣立ちの季節である初夏は、初々しいひな鳥の姿が見られるチャンス。実りの秋を経て、鳥たちにとって最大の試練となるのが、餌が激減する冬です。庭に餌台を設置するのは野鳥が餌に頼り過ぎてしまうためあまりおすすめしないのですが、冬だけは庭先にみかんを置いてみるのもいいと思います。冬は餌も水場も少なくなるので、鳥が庭に集まりやすく、実は観察しやすい季節でもあるんです」。

ソメイヨシノの蜜をなめるメジロ
ソメイヨシノの蜜をなめるメジロ

警戒心が強い鳥たちを観察するには、カーテンを開けるなど急な動きを避け、普段通りに過ごすのがベスト。鳥たちも毎日訪れるうちに、人間を含むその庭の環境に徐々に慣れてくるのだそうです。家で過ごす時間が増えた今こそ、ぜひ身近な自然の姿に目を向けてほしい、と語る萩原さん。
「鳥に限らず、自然観察は実は暮らしの中で誰もが気軽にできるものなんです。毎日見ているからこそ気づけることがたくさんありますし、きっと自分が住む場所の魅力を改めて発見できると思います」。
庭の小さな訪問者は、暮らしにささやかな楽しみも運んできてくれるでしょう。
(文中の写真はすべて萩原洋平さん撮影)

気になる鳥の調べ方

鳥を観察していると、「あれは何という鳥だろう?」と気になることは多いもの。自分で調べる際に答えにたどり着きやすくするには、自宅近くで見られる鳥の中から、判断基準となる鳥をひとつ覚えておくのがおすすめです。「例えばスズメを基準にして、見つけた鳥がスズメより大きいのか小さいのか、クチバシや尾の形はどうか、など比較できるようになると答え合わせしやすくなります」。日本野鳥の会では、鳥の大きさや生息環境から調べられる野鳥のポータルサイト「BIRD FUN」も運営中。ぜひ活用してみてください。

野鳥のポータルサイト「BIRD FUN」

取材協力:公益財団法人 日本野鳥の会 (萩原 洋平さん)

取材協力:公益財団法人 日本野鳥の会 (萩原 洋平さん)

野鳥と自然環境の保護・調査研究を行う会員制団体として、1934年に創立。萩原さんのような自然保護のプロである「レンジャー」の養成の他、全国で様々な自然体験イベントを行なっています。不定期ですが細田工務店で写真展示や講演会をすることも。

公益財団法人 日本野鳥の会

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