#008今日も一服。
Satén Japanese tea(小山 和裕さん)
在宅時間が長くなり、自宅でお茶を飲む機会が増えた方も多いことでしょう。老若男女問わず気軽に飲まれてきたお茶といえば、やはり日本茶。西荻窪の日本茶専門店「Satén Japanese tea」は、カフェとして日本茶を提供しているだけでなく、こだわりの茶葉やオリジナル茶器も販売している人気店。“バリスタ”ならぬ“茶リスタ”としてお店に立ち、日々日本茶を淹れている小山和裕さんにお話を伺いました。
「Satén Japanese tea」の特徴のひとつといえるのが、「シングルオリジン」の茶葉を扱っていること。
「シングルオリジンという言葉はコーヒーの分野で聞いたことがある方も多いと思いますが、ひとつの農園で栽培された固定品種を、他の品種とブレンドすることなく販売するやり方です。コーヒーでも“ブレンド”は有名ですが、実は日本茶市場でも複数の農園で栽培された茶葉がブレンドされた状態で売られているのが一般的なんです。ブレンドはブレンドの良さがありながらも、茶葉の個性を最もストレートに味わえるのがシングルオリジンの魅力。当店では各地の農園やマルシェに積極的に足を運び、厳選した茶葉だけを農家さんから直接仕入れて販売しています」。
そう伺って店頭にならぶ茶葉を眺めると、「マスカットのようにフルーティー」「マヨネーズのようなまろやかさ」など、日本茶の解説とは思えないような言葉が並んでいます。
「日本茶は現在 300 もの品種があるといわれていますが、たとえ同じ品種でも生産者や産地によって味が変わり、それぞれの個性があるんです。有名な産地でいえば、京都は高級海苔のような香ばしさとうまみ、静岡は渋みとすっきりした味わいが日常茶にぴったり、福岡はうまみと甘みがのってトロッとした飲み口。それこそコーヒーやワインのように、ぜひ日本茶も様々な品種を飲み比べて違いを楽しんでいただきたいと思っています」。
こだわりの茶葉を選んだら、覚えておきたいのはおいしいお茶の淹れ方。「Satén Japanese tea」では、お茶の濃さや温度を均一にする「茶海」という道具を使い、あえて煎を重ねることで、茶葉が持つうまみ、渋み、香りなどの特徴をコントロールしてベストな味わいの 1 杯を提供しているのだそう。一方で家庭で気軽に楽しむ淹れ方としては、意外なほどシンプルな方法をおすすめしてくれました。
「茶葉 5g、お湯 200cc、待ち時間 3 分。これを基本として測って淹れるだけで、誰でもおいしいお茶が飲めます。熱湯でもいいですし、よりうまみを出したい場合は湯温を 80 度くらいに下げるといいでしょう。あとは茶葉や好みに合わせて、基本から少しずつ調整してみてください」。
お茶のおいしさは料理と同様に実はすごくロジカルなもの、と小山さん。
「日本茶は日本人に最も馴染み深いお茶でありながら、意外と基本が知られていません。基本が知られないまま、適当な分量で淹れてしまったり、逆に難しく捉えすぎている方も多いように感じています。でも基本さえ覚えればいつでも簡単においしいお茶を淹れられますし、茶器がなければ計量カップに茶葉とお湯を入れてカップに注ぐやり方でも充分なんです。さらにそこから品種、産地、道具、淹れ方によってアレンジを重ねていけば、日本茶の世界を格段に楽しめるようになりますよ」。
まずは基本に忠実に、ゆっくりとお茶を淹れてみましょう。いつもの一服が、豊かに変わるかもしれません。
おいしいアイスティーの淹れ方
暑い時期の一服には、キンと冷えたアイスティーが欲しくなるもの。日本茶をアイスでおいしくいただくには、「基本の淹れ方からお湯を 150cc に減らし、氷の入ったグラスに注ぐのがおすすめです。それでもし味が薄く感じるようであれば、茶葉を 7g に増やしてみてください」と小山さん。この方法は熱湯を使うため香りが出やすいそうですが、もっと気軽にごくごくと飲みたいときは、2L のペットボトルの水に 10g の茶葉を入れて一晩置く「水出し」スタイルでもおいしいアイスティーに仕上がるそうです。
取材協力:Satén Japanese tea
日本茶専門店に勤めていた小山さんと、もともとはバリスタだというご友人が、日本茶をもっと日常的に楽しめるティースタンドのような場所を目指して 2018 年にオープン。シングルオリジンの日本茶のほか、抹茶ラテや抹茶プリンなど幅広い日本茶メニューが人気です。ドリンクはテイクアウトもできるので、散策がてら立ち寄ってみてはいかがでしょう。茶葉はオンラインでも購入できます。
Satén Japanese tea