#001暮らしと植物を、つなぐために。
庭の楽しみを、暮らしの中に。
BROCANTE/BHS around
店主 松田行弘さん
無造作でありながら、フランス映画のワンシーンに出てきそうなみずみずしい庭をつくり出す、ガーデナーの松田行弘さん。自由が丘のアンティークショップ「BROCANTE」の店主をつとめる傍ら、横浜市内の住宅地にアトリエを構え、住まいの庭や外構などを緑と親しむ空間に変えるプランニング・施工を手がけています。ガーデニング好きの間では、松田さんの自由で洗練された庭づくりに憧れる方も多いそう。そんな松田さんが植物の世界に魅せられたきっかけは、学生時代に遡ります。
「日々暮らす中で季節を感じる機会があまりないなと感じていたのですが、たまたま始めたアルバイト先の生花店で、植物を通じて四季を感じられるのがとても新鮮で楽しかったんです。もともと植物は好きでしたが、暮らしの身近にある植物っていいなと改めて感じたのは、その頃かもしれません」。
大学卒業後、一時は料理人の道を志すも約 1 年で退職。もうひとつの夢であったガーデナーの道を切り拓きたいとイギリスへ渡り、そこで様々な庭文化に出会います。
「花やグリーンの質感の組み合わせが驚くほど多彩で、庭ってこんなにも豊かなものなのかと衝撃を受けました。でも今思えばそれは表面的なきっかけにすぎず、庭と暮らしへの価値観を深めてくれたのは、足を伸ばして訪れたフランスで出会った友人たち。彼らの生活には当たり前のように植物が溶け込んでいて、日当たりのいい場所があるからバラを植えようとか、花が咲いたら部屋に飾ろうとか、とてもシンプルに植物のある暮らしを楽しんでいるんです。こんな風に、植物との距離が近くなる庭を自分もつくりたいと思うようになりました」。
帰国後は造園会社に入社して修行を積み、31 歳の時に独立。その数年後にはフランスアンティークの家具や雑貨を販売する「BROCANTE」もオープンさせ、それまでの形式的なガーデニングとは一線を画すスタイルが人気となりました。
「例えば、ベランダに植木と折りたたみの椅子がひとつずつあるだけでも充分“庭”といえるんです。実は我が家も、庭と呼べるスペースは 1 畳ほどしかありません。でも狭いなりに空間を立体的に使って緑を増やしたり、実をつけたブドウを家族で食べたりするのがすごく楽しいんですよ。そんな風に植物を楽しむアイデアって意外とたくさんあるので、これからも研究して伝えていきたいですね」。
その人の住まいやライフスタイルにあった庭のかたちを提案し、数年後に再会した時にはすっかり植物が暮らしの一部になっているのを見ると、本当に嬉しいと笑顔で語る松田さん。庭をつくることは、心地よい暮らしをつくること。松田さんの言葉やアトリエからは、そんなスタイルを教わったような気がします。
取材協力:BROCANTE/BHS around 店主 松田行弘さん
ガーデナー、BROCANTE 店主。学生時代に生花店でアルバイトした経験をきっかけに植物の良さに目覚め、卒業後はガーデニングの本場イギリスとフランスへ。滞在中に植物や古いものが身近にある暮らしに触れ、影響を受ける。帰国後は造園会社勤務を経て 31 歳の時独立。ガーデンプランニングを請け負う傍ら、自由が丘にアンティークショップ「BROCANTE」も出店し、庭と暮らしの楽しみを提案し続けている。
TEL:045-941-0029 神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎東 5-6-14
BROCANTE