相続した空き家の賢い処分方法|売却・解体・寄付のメリットとデメリット

近年、日本全国で空き家が増え続けており、それに伴う社会問題も深刻化しています。特に、親から家を相続したものの、使い道がなく放置状態となった空き家の存在は、多くの方にとって悩みの種となっています。
「空き家の処分方法が分からない」「売るにも手続きが大変そう」といった不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、空き家を放置するリスクを明確にしたうえで、売却、解体など、さまざまな処分方法のメリット・デメリットを詳しく解説します。さらに、処分を進める上での重要なポイントを紹介します。
空き家のお悩みを解決し、最適な方法を見つけるための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。


空き家を放置することで生じるリスク

放置され劣化が進んだ空き家
放置され劣化が進んだ空き家

空き家をそのまま放置していると、さまざまなリスクが発生します。ここでは、主なリスクについて具体的に紹介します。


1.維持管理の手間と費用の負担

誰も住んでいない空き家でも、建物は時間とともに劣化していきます。雨漏り、シロアリの発生、庭木の繁茂などを防ぐため、定期的なメンテナンスが必要です。これらの管理を怠ると、建物の傷みが進み、修繕費用が高額になる可能性があります。
具体的には、以下のような手間と費用が発生します。

  • 定期的な換気・清掃
  • 庭の手入れ
  • 郵便受けの確認
  • 建物の点検
  • セキュリティ対策

これらの管理を遠方に住んでいる方が行うのは大変な負担となりますし、専門業者に依頼すればその都度費用がかかります。

2.固定資産税が増加する可能性

住宅が建っている土地は、「住宅用地の特例」という制度により、固定資産税が大幅に軽減されています(200平方メートル以下の部分は評価額の1/6、それ以上の部分は1/3)。しかし、特定空家等に指定されてしまうと、この特例が解除され、固定資産税が最大で6倍になってしまう可能性があります。

「特定空家等」とは、適切な管理が行われず、倒壊の危険がある、衛生上有害となるおそれがある、景観を損なっているなど、周囲に悪影響を及ぼす可能性のある空き家のことです。自治体からの指導や勧告に従わない場合、特定空家等に指定され、固定資産税の軽減措置が適用されなくなるだけでなく、行政代執行による解体費用を請求されるといったリスクも発生します。

3.老朽化による安全性の問題

誰も住まず、適切な管理がされていない空き家は、建物の老朽化が急速に進みます。屋根瓦の落下、外壁の剥がれ、ブロック塀の倒壊など、通行人や近隣住民に危害を加える危険性も出てくるでしょう。
もし、老朽化した空き家が原因で第三者に被害が出た場合、所有者として損害賠償責任を問われる可能性があります。思わぬ事故を起こさないためにも、建物の安全性を確保することは非常に重要です。

4.近隣住民との関係悪化のリスク

管理されていない空き家は、景観を損なうだけでなく、雑草や害虫の発生源となり、不法投棄を誘発するなど、近隣住民に多大な迷惑をかける可能性があります。
例えば、庭木が隣地に越境したり、枯れ葉が飛散したり、異臭が発生したりすることで、近隣住民から苦情が寄せられることがあります。これらの問題が深刻化すれば、ご近所との関係が悪化。大きなトラブルに発展することも少なくありません。
地域社会の一員として、空き家が周囲に悪影響を与えないよう配慮することは、所有者の責任といえるでしょう。

5.資産価値の低下

空き家を長期間放置して劣化が進むと、建物の価値はどんどん下がっていきます。また、庭の手入れがされていない、ゴミが放置されているなど、見た目の印象も悪くなります。
たとえ将来的に売却を考えたとしても、状態の悪い空き家は買い手が見つかりにくく、売却価格も大幅に下がってしまう可能性が。さらに、解体が必要な状態になってしまうと、解体費用が別途かかるため、手元に残る金額はさらに少なくなります。
空き家は「資産」であると同時に、「負債」となり得ることも理解しておく必要があるでしょう。

空き家処分の主な方法とメリット・デメリット

不動産取引イメージ
不動産取引イメージ

空き家を処分する方法はいくつかあります。ここでは、もっとも一般的な「売却」と「相続土地国庫帰属制度の利用」のふたつの方法について、メリット・デメリットを詳しく解説します。

1. 売却(仲介・買取)

空き家を処分する最も一般的な方法の一つが「売却」です。売却には、不動産業者に買主を探してもらう「仲介」と、不動産業者自身に直接買い取ってもらう「買取」の2つの方法があります。

【メリット】

  • まとまった現金が得られる可能性がある
  • 納税や管理義務がなくなる
  • 手続きを専門家に任せられる

【デメリット】

  • すぐに売れるとは限らない
  • 希望通りの価格で売れない可能性がある
  • 仲介手数料や税金がかかる

空き家の状態が良い場合や、時間をかけても高く売りたい場合は仲介、早く現金化したい場合や、多少価格が下がっても手間をかけたくない場合は買取が適しているといえます。

2. 相続土地国庫帰属制度の利用

「相続土地国庫帰属制度」は、相続または遺贈によって取得した土地について、一定の要件を満たした場合に、国にその所有権を帰属させられる制度です。2023年4月27日から始まった比較的新しい制度で、「所有者不明土地」の派生予防を目的としています。

【メリット】

  • 納税や管理義務がなくなる
  • 売却が難しい土地でも手放せる可能性がある

【デメリット】

  • 建物が建っている土地は原則対象外
  • 承認要件が厳しい
  • 負担金がかかる
  • 手続きが複雑で時間がかかる

この制度は、相続したものの利用予定がなく、管理も難しいといった土地の所有者にとっては新たな選択肢となり得ますが、空き家がある場合は解体が必要です。さらに厳しい要件と負担金があるため、万能な解決策ではないことに注意が必要です。

空き家を処分する際のポイントと注意点

解体される空き家
解体される空き家

空き家を処分する方法はいくつかありますが、どの方法を選ぶにしても事前に確認しておくべき重要なポイントや注意点があります。これらの確認を怠ると、後々トラブルになったり、余分な費用がかかったりする可能性があります。
スムーズかつ安心して空き家を処分するために、以下の点を必ずチェックしましょう。

1. 所有権移転登記(相続登記)の確認

空き家を処分する際には、その建物の「所有者が誰になっているか」を正確に把握しておくことが重要です。相続で取得した場合、「亡くなった方の名義のまま」になっているケースが非常に多く見受けられます。
不動産の所有権を売買や贈与などで移転するには、現在の所有者が登記簿上の名義人である必要があります。相続によって所有者が変わった場合は、法務局で「相続登記(所有権移転登記)」の手続きをすみやかに進めましょう。

2. 境界確定のチェック

土地の「境界」が明確になっているかどうかも、空き家を処分するうえで大切なチェックポイントです。
正確な境界は通常「境界杭」の位置で確認できますが、敷地によっては境界杭が見つからないことも。土地の境界が不明確なままでは、不動産取引の折に際にトラブルになる可能性が高いため、必要に応じて土地家屋調査士に依頼し、隣地所有者との立ち会いのもとで境界を確定させ、「境界確認書」を作成しておきましょう。

3. 処分費用の確認

空き家を処分する際には、さまざまな費用が発生します。主なものとして、不動産売却時の仲介手数料や、名義変更のための登記費用、解体を行う場合の解体費、さらに譲渡や贈与時に発生する各種税金(譲渡所得税、贈与税、不動産取得税など)があります。
特に解体費用は建物の規模や構造、アスベストの有無などによって数十万~数百万円と大きく変動します。また、国庫帰属制度などを利用する際にも所定の負担金が必要です。
処分方法により必要な費用や税負担が異なるため、事前に不動産業者や専門家に相談し、総額をしっかり見積もることが重要です。

4. 複数の専門家への相談

空き家の処分には法律・税金・不動産取引など複雑な手続きが絡みます。信頼できる不動産会社だけでなく、司法書士(登記の専門家)や税理士(税金の専門家)など、各分野のプロに相談することで、トラブルを未然に回避し、最適な方法を選べるようになります。
特に相続や売却益に関する税金の申告はプロの助言が不可欠です。

空き家が売れない場合の対処法

空き家に関して悩む夫婦
空き家に関して悩む夫婦

どんな空き家でもすぐに売却できるわけではありません。古い物件や立地条件が悪い場合、なかなか買い手が見つからないこともあるでしょう。そんな時に検討できる対処法を紹介します。

1. 売却価格の見直し

空き家がなかなか売れない場合、最初に見直したいのが売却価格です。市場価格より高く設定していると買い手が現れにくくなるため、不動産会社に現状の査定を依頼し、近隣の取引事例などを参考に適正な価格設定を行いましょう。
価格を現実的な水準へ調整することで、購入希望者の関心を集めやすくなり、売却のチャンスが広がります。売主の希望だけでなく、相場をしっかり把握することが大切です。

2. 更地化・リフォームして売却

建物が老朽化している場合は、解体して更地にする、またはリフォーム・リノベーションを施してから売り出す方法が有効です。更地にすることで買い手の選択肢が広がり、リフォーム済み物件は新たな価値が生まれます。
ただし、解体費用や改修費用が必要となるため、売却価格や費用対効果を事前にしっかりと検討しましょう。状況に応じて、専門業者の相談を活用するのがおすすめです。

3. 更地にして駐車場として活用

空き家の売却が難しい場合、更地にして月極駐車場やコインパーキングとして一時的に運用する方法もおすすめです。これにより、一定の収入を得ながら土地を維持管理できます。将来的に不動産市場が動いた際に、再度売却を検討する柔軟性も持てます。
ただし、初期の解体費用や駐車場としての設備投資が必要となること、また運用管理の手間が発生する点も理解しておきましょう。

4. リフォーム・リノベーションして自分たちで住む

思い切って自分たちで住む、または賃貸物件として活用するのも有効な選択肢です。リフォームやリノベーションで住みやすい空間に再生すれば、思い出のある家を活かせます。一定の費用はかかりますが、親族間での活用や収益物件としての運用も可能です。
補助金や各種支援制度の活用も検討しつつ、ライフスタイルや資産形成の観点から最適な方法を選びましょう。

空き家処分で使える補助金・節税制度

家とお金、補助金、節税制度のイメージ
家とお金、補助金、節税制度のイメージ

空き家の処分や活用は、補助金制度や節税につながる税制の特例措置の適用対象となる場合があります。ここでは、主な制度を紹介します。

1. 自治体の補助金・助成金制度

空き家の処分や活用にあたっては、自治体が提供するさまざまな補助金・助成金制度を活用できる場合があります。これらの制度は、空き家の解体、リフォーム、耐震改修などにかかる費用の一部を補助することで、所有者の負担を軽減し、空き家対策を促進することを目的としています。
ご自身の所有する空き家がある市区町村で、どのような補助金・助成金制度があるかを確認してみましょう。制度を活用すれば、空き家の処分や活用にかかる費用負担を大幅に減らせます。
ただし、制度によっては予算に達し次第、受付終了となる可能性もあるため、早めの検討が大切です。

2. 空き家の「譲渡所得の3,000万円特別控除」

相続した空き家を一定の条件を満たして売却した場合、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円(相続人が3人以上いる場合は1人あたり2,000万円)まで控除できる特例制度です。
適用の主な条件は、「被相続人が一人暮らしであった」「昭和56年5月31日以前に建築された家屋とその敷地である」「相続開始から譲渡まで空き家のままである」などです。譲渡価額が1億円を超える場合や、空き家を賃貸や事業用に利用した場合は適用されません。
適用には市区町村での確認書類の取得など、所定の手続きが必要です。

3. 譲渡所得の計算で使える「取得費加算の特例」

取得費加算の特例とは、相続した空き家を相続開始から3年10ヶ月以内に売却し、譲渡所得税の申告を行った場合、相続税の一部を不動産の取得費に加算できる制度です。これにより譲渡所得が圧縮され、納めるべき税額が少なくなります。
適用対象は相続または遺贈により取得した財産で、相続税を実際に納めていることが条件です。加算できる金額は、相続税のうち売却資産に対応する部分のみとなります。
取得費加算の特例を受けるためには、売却した翌年の確定申告時に必要書類を提出して手続きを行います。ただし、譲渡所得の3,000万円特別控除とは併用できない点に注意しましょう。

まとめ|空き家の処分・活用は細田工務店にお任せください

空き家対策について相談するシニア夫婦
空き家対策について相談するシニア夫婦

空き家の処分には、多様な選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、所有者の状況や物件の状態によって最適な方法は異なります。また、手続きや費用、税金、相続、近隣トラブルなど、問題が複雑に絡み合うケースも少なくありません。

細田工務店では、こうした空き家のお悩みをワンストップでサポートしています。売却・解体・活用提案はもちろん、リフォームや賃貸、駐車場などへの土地活用まで幅広くご提案。宅地建物取引士や税理士、司法書士といった各分野の専門家と連携し、法律・税務・不動産の側面からも安心してご相談いただける体制を整えています。
空き家の処分・活用にお悩みなら、ぜひ細田工務店にご相談ください。


1. 細田工務店の空き家お悩み相談事例

実際に細田工務店にご相談いただいた空き家の事例を紹介します。

【事例1:姉妹共有の空き家を売却し、3,000万円控除を活用】
姉妹で実家を相続後3年間、活用できず管理も負担に。近隣からのクレームも増えたため売却を検討。税理士と連携し、空き家の3,000万円特別控除適用期限内での売却を進め、無事に希望通り控除を適用できた。共有者それぞれに控除が適用され、税負担も軽減。

【事例2:高齢のお母様の判断能力があるうちに迅速売却】
一人暮らしの母親が事故で入院し、今後の独居が厳しいと医師から指摘。遠方に住む娘が管理困難なため、母親の判断能力があるうちに売却を希望。司法書士が意思確認を行い、売却手段として仲介と買取を提案。早期売却を希望され、買取を選択。1ヶ月で売却が完了し、施設入所費用も確保できた。

【事例3:12年間空き家だった実家をリフォームして自己利用】
兄弟3人で相続した築72年の空き家を長年放置。相談者が自己居住を希望し、耐震診断・リフォームを実施。兄弟の同意を得て持分を贈与で取得し、税理士と将来の相続・税務にも配慮。思い出の実家を手放さず、快適な住まいとして再活用できた。

他にもさまざまなご相談に対応しています。詳しくは相談事例ページをご覧ください。