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耐震・制震(制振)・免震の違いとは?それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説

世界で発生しているマグニチュード6.0以上の地震のうち、2割が日本で起きています。日本で暮らす以上、建物の倒壊や家具などの転倒・落下から命を守るための地震対策が不可欠です。

地震に耐えるように設計された構造には、大きく分けて「耐震」「制震(制振)」「免震」の3種類あります。この記事では、それぞれの構造の特徴や違い、メリット・デメリットについて紹介しますので、住宅を建てる際の参考にしてみてください。

耐震・制震(制振)・免震の構造の違い

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地震に強い家づくりについて知るために、まず「耐震」「制震(制振)」「免震」、それぞれの構造について確認しておきましょう。

1. 耐震とは

地震の揺れに耐えられるように、建物自体の強度を高める構造です。柱や梁などの骨組みを筋かいや合板などで補強し、地震による水平方向への抵抗力を高めて倒壊を防ぎます。戸建住宅からマンション、高層ビルまで幅広く採用されています。

2. 制震(制振)とは

建物内部に地震の揺れを吸収する制震装置(制振ダンパーなど)を設置して、地震による振動の減衰を速める構造です。上層階ほど揺れを抑えられるため、これまでマンションや高層ビルなどの大型建築物で採用されていましたが、近年は戸建て住宅での導入も進んでいます。

3. 免震とは

建物と基礎の間に地震の揺れを吸収する免震装置を設置し、振動を建物に直接伝えないようにする構造です。地盤と建物が切り離されているため、建物へのダメージや揺れを大幅に減少できます。耐震や制震(制振)と比べて、建物の揺れを防ぐ効果が高く、一般的にタワーマンションや高層ビルなどで多く採用されています。

耐震のメリット

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1. 免震や制震よりも建設コストが安い

免震や制震と比較すると、建設コストを抑えられるのが最大のメリットです。建物は、建築基準法による耐震基準を満たして建てることが定められているため、特別な装置の設置や追加費用を負担しなくても、できあがった建物は最低限の耐震性が確保されています。

2. 強風や台風の影響を受けにくい

耐震は、水平の揺れに対する抵抗力を高めた構造です。地震だけでなく、台風や強風による揺れを軽減できます。

3. 設計の自由度が高い

地盤に制約がある免震構造と違い、設計上の制約が少ないので、希望に沿った住宅を建てられます。ただし、耐震壁や筋かいの設置によって、開口部の位置や大きさはある程度制限される場合があります。

耐震のデメリット

1. 上階ほど揺れが大きくなる

耐震構造は、建物の揺れ自体を減少することはできません。どれだけ建物自体を強化しても、地震の揺れはダイレクトに伝わってしまいます。耐震構造の建物は、地震が強くなるほど揺れが大きくなり、上階になるほど揺れ幅は大きくなります。

2. 二次災害のリスクがある

地震の揺れが建物に直接伝わるため、大きな地震が発生した場合、家具の倒壊や移動、物の落下などによる被害が大きくなる恐れがあります。また、電気や水道、ガスなどのインフラが停止する二次災害のリスクも高まります。

3. 繰り返しの揺れに弱い

耐震構造には建物の揺れ自体を減少させる効果がないため、繰り返し地震が発生すると建物が受けるダメージは徐々に蓄積されていきます。その結果、建物の変形や耐震性の低下による倒壊の可能性を高めてしまいます。また、大きな地震が連続して発生したり、強い揺れが起きたりした場合には、点検や修理が必要となる可能性があるでしょう。近年、強い地震が頻発している状況を考えると、その余震も耐え抜けるような余力を持たせた設計や制振壁の併用などがあると、さらに安心感が高まります。

制震(制振)のメリット

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1. 免震よりもコストが安くメンテナンスが簡単または不要

ダンパーなどの制振装置を設置する、制震(制振)構造の大きなメリットは、免震よりも導入コストがかからず、使用する装置の種類によってメンテナンスが簡単で済む、もしくは不要である点です。そのため、ランニングコストも大幅に軽減できます。
メンテナンスの要不要はダンパーの種類によって異なり、オイルダンパーやゴムダンパーは、オイル漏れや劣化がないかなど、定期的な点検が必要になりますが、鋼製ダンパーなら、メンテナンスが不要です。ちなみに細田工務店では、この鋼製ダンパーを採用しています。
また、建物の構造体に装置を設置するため、地盤の強度に関係なく導入できる点もメリットといえるでしょう。

2. 繰り返しの地震に強い

ダンパーが地震のエネルギーを吸収し、揺れを軽減するため、建物へのダメージを最小限に抑えることが可能です。繰り返し地震が発生しても構造体への負担が少なく、高い耐震性能を保ちます。耐久性の低下や倒壊のリスクを防げるため、長期にわたって安心して住み続けられるでしょう。

3. 台風や強風による揺れに強い

地震はもちろんのこと、台風や強風による揺れに対しても高い効果を発揮します。高層建築においても、上階の揺れを抑制する効果が高い構造です。

制震(制振)のデメリット

1. 小さな地震には効果を発揮しにくい

制振ダンパーは、震度5以上の大きな地震に対して、とくに高い効果を発揮する特徴があります。そのため、小さな地震に対しては、十分な効果を得にくい場合があります。

2. 装置の設置場所と数が効果に影響する

制振ダンパーの効果は、設置場所や数によって変わります。建物に合わせて、適切な配置と数量を確保することが重要です。

3. 制震のみでは建物の倒壊に弱い

制震(制振)は、建物の揺れに対して高い効果を発揮しますが、それだけでは建物の倒壊を防ぐことはできません。やはり建物自体の強度も重要です。制震(制振)と耐震を組み合わせることで、より安全性の高い地震対策ができます。

免震のメリット

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1. 地震による揺れが小さい

建物と地盤を切り離し、免震装置により地震の揺れを吸収することで、地震力を1/3〜1/5に低減します。地震の強さによる効果の差が少なく、大きな地震にも高い効果を発揮します。

2. 家具が倒れにくい

免震構造は、激しい揺れをゆったりとした揺れに変えるため、地震による負傷原因の約半数を占める、家具の転倒や物の落下を最小限に抑えることが可能です。建物内部での揺れが少なくなることで、火災や停電といった二次災害のリスクを大きく軽減できます。

3. 建物内部のダメージを防止できる

壁の内部や接合部など、構造体の損傷を軽減できるのも、免震構造の特徴の一つです。地震による被害が少ないため、大きな地震が起きた後でも普段の生活を維持しやすく、修繕費などのライフサイクルコストも抑えられます。

免震のデメリット

1. 縦揺れや強風による揺れには効果が少ない

免震は、横揺れの地震に対して高い効果を発揮しますが、建物と地面が切り離されている構造的な特徴から、縦揺れにはあまり強くありません。台風や強風による揺れに対しての対応力も低く、軟弱な地盤では揺れが十分に吸収できないため、効果を発揮できない場合もあります。
また、免震装置の作動に必要な揺れ幅を確保するためには、敷地の周囲に一定のスペースが必要です。そのため、狭小住宅や十分な敷地がない場合、設置が難しい場合があります。

2. コストが高くつく

耐震や制震と比べると、免震装置本体や設置費用などのコストがかかります。定期点検やメンテナンス、免震装置の交換が必要となるので、長期にわたってランニングコストが発生します。

3. 耐用年数が未知数

免震装置に使われているゴムの耐用年数は、およそ60〜80年です。長期にわたる使用を想定して作られていますが、免震技術の歴史はまだ浅く、耐用年数を超えた建物は存在していません。長期使用によるゴムの状態がまだ確認されていないため、引き続き耐久性について観察していく必要があります。

耐震・制震(制振)・免震の違いについてのまとめ

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地震発生時に大切な住まいを守る技術には、「耐震」「制震(制振)」「免震」の3種類あります。それぞれ異なる特徴があり、いずれか1つを取り入れれば安全に暮らせるというものではありません。

細田工務店が採用している「ハイブリッドキューブ工法」は、床・壁・天井、すべてを強い面で囲い、耐震等級において最高等級である3を取得できる「6面体構造」とメンテナンス不要の「鋼製の制振ダンパー」を組み合わせた技術です。耐震と制震(制振)のデメリットを解消し、安全で長寿命な住まいを実現しています。

当社建築現場
当社建築現場

ハイブリッドキューブ工法は、1947年の創業以来、木の家にこだわり続け、創意工夫を重ねてきた技術によりつくりあげました。

世界有数の地震国である日本で住宅を建てる際には、地震の被害を最小限に抑えるための対策が重要です。家族みんなが安心安全で暮らせる地震に強い家づくりは、細田工務店にぜひご相談ください。

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監修者紹介

齊藤年男(さいとうとしお)
一級建築士/構造設計一級建築士
齊藤年男(さいとうとしお) 一級建築士/構造設計一級建築士

1957年新潟県生まれ。
1981年法政大学工学部建築学科卒業、同年(株)細田工務店入社。
主に設計・施工の技術開発に携わり、特に構造設計分野では、後進の指導・育成にも力を注ぎ、「専門的で難しいことを、わかりやすく」を心がけ、多くの著書を記している。