すみここちレポート

# 002好きなものに、囲まれて。

杉並区T様邸2011年竣工

今回お邪魔したのは杉並区某所にあるTさんのお宅。JR中央線の駅を降りて、しばらく歩いた閑静な住宅街に建つ重厚感ある洋風のお住まいです。家を囲む植栽や、壁面に張った蔦の様子が、築5年の建物に、それ以上の風格を纏わせています。お話を伺うと、以前建っていた家は大正13年に建てられたもので、この植栽はご主人が『幼少の頃からあった樹々ばかり』とのこと。近隣の景観をも、どこか落ち着きのある雰囲気に変えてしまう様子は、何十年もの年月をかけて、この土地に根付いた自然の存在感だったのかと思い至るのです。

2階までの吹き抜けの玄関。1階にはリビングとダイニングスペース、中学校で美術の講師をされているという奥さまのアトリエと、ご主人の書斎。2階は寝室以外に3室お部屋がありますが、どの部屋も趣味を中心としたお部屋ばかり。すでに3人のお子さんたちを育て上げられており、お宅はご夫婦の自由な空間になっているようです。

Tさんが家の建替えを決めたのは、ご近所をお散歩中に細田工務店が建てた家を見学されたのがきっかけだったのだとか。
『もともと建っていた家は、祖父の代から住み継いできた思い出の詰まった大切な家でしたが、築90年近くにもなり、あちこちガタがきて地震に耐えられるかなど、不安もあったんですね。それで細田工務店の営業の方と相談して、建替えを決めたんです』とご主人。建替えに際しては、それまでの日本家屋から、洋風の家へと様相をがらりと変えましたが、前述のお庭の樹々はもちろんのこと、祖父の代から3代に渡って集められた蔵書を収納してきた7つの大きな本棚や、梁、欄間など、そここに、当時の家を偲ばせる面影を残しているのも印象的です。

さらに、検討中にこだわったポイントをご主人に伺うと、
『空間が広く感じられるような吹き抜け。妻が存分に絵を描けるアトリエ、そしてその作品が美しく映える照明というのは一番にお願いした所ですね』とご主人。
実際にアトリエを拝見させていただくと、南向きの庭に面した開口部、玄関と同様に2階までの吹き抜けと、その吹き抜けには以前の家の梁が意匠として施され、天窓からは明るい光が降り注ぎます。そこは絵心の有無にかかわらず、思わずキャンバスに向かいたくなるような空間。そして気がつけば、ご主人が『一番にお願いした所』というポイントは、すべてこのアトリエに詰まっているのです。
『私が創ったものをアトリエに置いておくと、知らない間に主人が持ち出して、飾っているんですよ』と奥さま。
ご夫妻の仲の良さが、そのまま表れているようなT邸には、調度品一つとっても、かけがえの無い想いが詰まっているのです。