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のびやかにひろがる空。どこか懐かしさを感じさせてくれる山々の景色。富士山も一望できるという高台の地にKさんのご自宅はあります。都会暮らしに慣れてしまうと、贅沢とさえ思ってしまう自然環境。誰もが心のどこかで憧れ、惹かれつつも様々な事情から夢物語とあきらめてしまうような暮らしを、Kさんは転職をされてまで選ばれました。

「本当は北海道に住みたかったんですよ」と語るKさんは、まさにこの自然のイメージにぴったりの穏やかなご夫妻。はじめてお会いしたのに、どこか心の緊張を解いていただけるような感覚になるお二人です。

お住まいは洋風の外観に反して、玄関を開けると和を基調とした畳の間。さらにリビングへと進むと贅沢な吹き抜けのオーディオルーム。キッチンを挟んで現れるもう一つの吹き抜けの空間にはリビングダイニングがあり、その隣の和室とつながっています。「1階には玄関と洗面の扉以外に、空間を密閉してしまうようなドアが無いんですよ」という言葉通り、ここはそれぞれが独立しているようで、ゆるやかに呼応し合う空間。オーディオルームで流れるバッハの音色が、和室にまで伝わってくる。この感覚が、何ともいえない心地よさを生みだしています。

ふと感じたのは、Kさんはこの居心地の良さを追求したくて、家を建てられたのではないかということ。建物のイメージについて伺うと、「建てる時まで、家の具体的なイメージは無かったんですよ。建て売りの分譲住宅も並行検討していたくらいですから」とのこと。この土地を選ぶ際と同じように、家づくりでも、ご自身の感性を大切にされたようです。「手探りでしたけど、壁紙一つを選ぶ打ち合わせにしても、家を建てる行程の一つひとつが本当に楽しかった」と語るように、家づくりを楽しんだことに、心地よさの秘密があるようです。

例えば和室の中心には掘りごたつ。これなら、普段椅子の生活に慣れてしまっていても、気兼ねなく寛げます。天板の中心に穴の空いたテーブルには、特注の囲炉裏が鎮座しています。寒い季節ともなれば、お餅を焼いたり、鍋をしたり、お酒を燗したりと大活躍をすることでしょう。また、ダイニングと和室の両方がキッチンのすぐそばにあるため、料理に合わせて食事の空間を変える愉しみもなどと想像を巡らせているうちに、取材も長引きがちに。ああまた、寒い季節にお邪魔したらどうだろう、我が家のダイニングでも真似できるの ではないだろうかと、ついつい想い浮かべてしまう。そんな素敵なお宅でした。